不動産を所得している場合に、必要経費とすることができるのは、不動産収入を得るために必要な費用です。
そして、節税をするためには、経費を漏れなく適正に計上することがポイントになります。
一般的には、不動産経営で認められている経費は以下の13項目です。
(1)租税公課
(2)損害保険料
(3)減価償却費
(4)修理費
(5)借入金利息
(6)管理費
(7)交通費
(8)広告宣伝費
(9)通信費
(10)新聞図書費
(11)受信料
(12)消耗品料金
(13)その他、税理士に依頼した費用
それぞれについて見ていきましょう。
(1)租税公課
不動産所得の必要経費として、以下の業務に関連して納付する税金を計上することができます。
●土地・建物に対する固定資産税・都市計画税
●賃貸物件を取得した際に課される登録免許税、不動産取得税
●賃貸による儲けに課される事業税
●その他、自動車税、印紙税…など。
(2)損害保険料
賃貸している建物などが加入している以下の保険を経費として計上することが可能です。
●火災保険
●地震保険
●賃貸住宅費用補償保険…など。
なお、一括払いの場合には、当年度分しか必要経費として計上ができませんので、注意しましょう。例えば、10年度分を一回で支払ったとしても、経費計上できるのは初年度分だけになります。
(3)減価償却費
減価償却費は、建築費を建物の構造・用途で定められている耐用年数に応じて、毎年減った分の価値を計上して償却する費用です。そのため、毎年経費として計上することができます。
減価償却費の計算方法は、「定額法」と「定率法」2種類あります。ただし、平成10年4月1日以後に取得した建物については、定額法のみが適用となったため、この記事では定額法を説明します。
定額法とは、毎年一定額の償却費を計上する方法です。
平成19年4月1日以後に取得した資産の場合、以下計算式にて計算します。
【定額法による減価償却の計算式】
減価償却費の額=取得価格×法定耐用年数に応じた償却率
減価償却資産の償却率はこちらで確認してみてください。
【中古資産の耐用年数の計算式】
a 法定耐用年数の全部を経過した資産
耐用年数=法定耐用年数×0.2
b 法定耐用年数の一部を経過した資産
耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2
建物の耐用年数については、国税庁の「耐用年数(建物・建物付属)の一覧表」で確認してみてください。
【例】
例として、平成25年5月15日に、2000万円で取得した法定耐用年数が30年で、経過年数が10年の中古物件の減価償却費を計算してみましょう。
(耐用年数)
(30-10)+10×0.2=22年
(減価償却費の額)
2000万円×0.046(耐用年数22年の償却率)=92万円
また、少額減価償却資産については、以下のように経費計上をします。
(4)修理費
物件の修繕費として経費計上できるのは、通常の維持管理費用、毀損(きそん)した固定資産の現状回復費用になります。
具体的に以下のような建物の修繕は、修繕費として計上することができます。
(修繕費の例)
•建物の壁、ベランダのペンキなどの塗り替え
•ドア、トイレ、台所、換気扇など部屋の設備の修理
•畳の取り替え
•障子、襖の張り替え…など。
一方で、以下のような修繕目的であるが固定資産の価値を高めたり、建物の耐久性を増やしたりするための支出は、「資本的支出」となります。この費用は経費として計上することはできません。注意しましょう。
(資本的支出の例)
•用途変更のための模様替えなど、改造または改装に直接用した費用
•建物の避難階段の取り付けなど、物理的に付け加えた部分の費用…など。
また、以下の場合もその年度の修繕費として計上できます。
•おおむね3年以内の期間を周期として修繕が行われる時、または費用が20万円未満の場合
•修繕費か資本的支出かの判断が不明確で、60万円未満の場合。または、その資産の前年末の取得価格のおおむね10%相当以下である場合
(5)借入金利息
賃貸する建物の取得にあたり金融機関から融資を受けた場合、その借入金の利息は経費として計上することができます。
しかし、以下の費用は経費にならないので注意しましょう。
•借入金の返済額のうち、元本に相当する部分
•賃貸としての業務が開始する前の利息部分
(6)管理費
賃貸建物の管理費も必要経費として計上することができます。
(管理費の例)
•賃貸建物の管理をする管理会社へ支払う管理費・修繕積立金
•入居者の管理をしてくれる賃貸管理会社へ支払う管理費
(7)広告宣伝費
入居者募集などで不動産の管理会社に支払ったお金です。この費用も経費として計上することが可能です。
(8)交通費
下のような移動目的で利用した場合の交通費は、経費として計上することができます。
1不動産投資会社が主催したセミナーに参加するための交通費
2管理会社などと打ち合わせするための交通費
3物件を見に行くための交通費…など
そのため、交通費の領収書はきちんと保管しておくようにしましょう。
このほか、車で移動する場合の費用についても経費計上が可能です。
具体的には、
•車のガソリン代、
•駐車場代、
•高速道路料金、
•車検費用、
•保険料、
•自動車税など
車に関わる費用になります。
しかし、自動車はプライベートでも利用する場合は、私用と不動産投資活動での使用との区分けが難しいため、全額ではなく4割前後で申請するのが1つの目安となるでしょう。正確に計上するため、初年度は全て記録しておくのもよいでしょう。
(9)通信費
管理会社と連絡をした際の通話料、インターネットにて物件を検索するなどの通信費も経費として申請できます。こちらもプライベートで利用することがある場合には、区分けが難しくなるので全額ではなく、費用の3~4割程度で申請している人が多いようです。
(10)新聞図書費
不動産の動向、経済の動向などの不動産経営に影響がある情報を得るために新聞を購読している場合には、その費用を経費として計上することができます。また、不動産事業の関係で購入した本も経費として計上できます。
(11)受信料
不動産管理会社や税理士との打ち合わせなどで飲食をした費用も経費として認められる場合があります。
(接待交際費と認められるケース)
•管理会社などと打ち合わせするための飲食費
•税理士との打ち合わせするための飲食費
•不動産投資仲間との意見交流するための飲食費…など
(12)消耗品料金
物件を撮影するためのデジタルカメラや物件検索や確定申告するためのパソコン、図面を印刷するためのプリンターなどは消耗品として経費計上することができます。
(13)その他、税理士に依頼した場合にかかる費用
多くの人が確定申告を自身で行っています。一方で、申告のやり方が分からなかったり、時間がない場合は、税金のプロの税理士に依頼する人も少なくありません。
もし、税理士に申告を依頼した場合には、その費用も必要経費として計上することができます。
税理士に支払うお金は、依頼する内容にもよりますが、確定申告の時期(毎年2~3月ぐらい)であれば、1回で5~10万円が相場のようです。